魅惑のくちびる

「おもしろいことやれって言われてもなあ」

お花見の幹事に決まってからというもの、広瀬くんは毎日のように悩んでいた。

「璃音(りおん)さん。何がいいっすかね?」

頼って相談されても、あいにくわたしはおもしろい提案ができるような才能を持ち合わせていない。

「ごめん。わたしじゃない人に協力してもらったほうがいいかも……」

断るのもかわいそうなほどに、まったく何も頭に浮かばない様子。


そんな広瀬くんが、突然思い立ったようにてきぱきと行動に移したのは、実にお花見の3日前のこと。


「友達の会社でやって、えらく好評だったらしいんっすよ」


絶対にオレも成功させてみせますよ、と張り切って準備したものは、頭の部分が長方形にくり貫かれた段ボール箱が一つ。

「花見用!」と書いた紙が貼られた投票箱だった。

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