最愛。
「ふぅ~。」

心の底から出たような声を出しながら、ドスンッと腰を下ろす。

畑耕すのって、以外と大変。

こんなこと三年間やってたら、腰痛めそう。

「初めての授業でこれ言うのどうかとはおもうんだけどー、

この作業服、何?

そこら辺にいるおっさんが着るやつじゃん!」

さっきからずっと同じことを、口を尖らせながらぐちぐち言ってる志織。

確かに、こんな格好はしなさそうなイメージがある。

「志織さぁ、なんでこの学校にしたの?

正直、イメージと違うよね…」

「何でって…

歩月さぁ、人を好きになったことないでしょ。」

っえ?!

「あっ、うん。

そうだね、ないかも。」

今まで好きな人なんていたことなかった。

まわりの友だちはみんな、次誰にしようかなぁ。とかよく言ってた。

あたしだって恋に興味がなかったわけじゃない。

告白された、ある男の子と付き合ってみようかな…なんて考えたことだってある。

だけど、なんかそんな風に決めちゃうのはもったいなくて。

初めての彼氏は、心から好きになった人がいいと思ってたから。

そんなことを考え続けてもう随分たった。

この学校で、新しい出会いなんてのもちょっと期待してたりもする。

我ながら恥ずかしい。

「あたし実はね。

好きな人がいたの。

その人はすごく優しくて、よく花を育てたりしてた。

それを見るのが好きだった。

だけどその人は死んじゃった。」

すごく遠い空を見る目からは、涙が零れ落ちそうだった。

「志織━━━…」

「っあ、気使わなくていいんだよ?

元々片想いだったし。

それでも、その人がしていたことを志織もしよう。って思ったから…」

適当に決めたあたしなんかとは全然違う。

志織にはすごく強い想いがあったんだ。

今はすごく明るい志織だけど、泣きそうになってた志織だけど、

その人のことはもう、忘れたのだろうか━━━━…
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