華の涙






途中から、目を閉じてるよう言われ、

きゅ……と目を閉じて

視界が見えない中、一之助様の手を頼りに

ゆっくり歩いていた





「もう開けて良いぞ」





一之助様の言葉を合図に、

ゆっくり目を開け


私は目の前の姿に言葉を失った





「っ…………」





10年ぶりに見る吉原の外




咲き乱れる桜

そして…大きな空





「一之助様………っ」





私達は抱き合う



春の暖かな日差しと

最愛の人の温もり




ツウ…と涙が頬を濡らした







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