風が吹く街
「ねぇ、有希どうしたの!?」

って言うななみの声も、

「おい、待てよ!」

っていう祥の声も、全部無視してとにかく走った。
何でこの町にいるの?
私はなにも言わなかったから知るはずないのに...
ななみたちには一応連絡入れとかなきゃ。

「もしもし」

「もしもしじゃない!あんたどこにいるの?」

「近所の公園。ごめん。」

「今からそっちいくから!」

「心配しないで。大丈夫だから。しばらく一人で考えたいことがあるの。理由はあとでちゃんと言うから。」

「...わかった。じゃあ私はいかないから。」

「本当にごめん。」

そういって電話を切る。
私はお気に入りのベンチに腰掛け、自分を落ち着かせようと必死だった。
もう会ってもなにも感じないと思ったのに、何でこんな動揺してんの...
考えてるうちに辺りは暗くなってきた。
あいつと最初に会ったのもこんなところだったな。
あの日はお母さんと喧嘩して、プチ家でしてたんだっけ...
あいつとの思い出は、忘れようとしても、どれも鮮明に思い出される。
感情が込み上げてきて涙がこぼれた。

「やっぱり好きだよ。そばにいたいよ...」

決意弱いな、私は忘れようって決めたのに。

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