風が吹く街
新しい街は前のところよりずっと都会で、何でもあった。
だけどやっぱり比べてしまう。あの街で思い出を作りすぎてしまったから。
あの街には大切な人がいたから。

~♪

電話にでる。
向こう側ではあいつの声がする。
相手は私の彼氏の祥だった。

「もしもし」

私はあくまでも普通のふりをする。

"今どこにいるんだよ"

「家族と出掛けてる」

"今日の夜でもいいから会いたい"

「ごめん。今日は帰らない」

"いつ帰ってくるんだよ"

帰らないよ、そこにはもう...

「ごめん」

"は?何で謝ってるんだよ"

「ごめん」

"なんかあったのかよ"

「・・・」

"おい、黙るなよ。話聞くから"

優しい声で言わないで。
余計に辛くなるから。

「もう別れよう」

そういおうと決めていた。
私はもう祥には会わない。

"いきなりどうしたんだよ。"

「ごめん」

"謝られてもわかんねーよ!"

「だからもう会えない」

"だから説明しろって!!"

ヤバイ、泣きそうだ。

「今までありがとう」

"っおい!待て..."

最後の言葉は聞かずにきった。ひどいやつでごめん。
でも私にはこれしか思い付かなかったの。
この街で暮らしていくためのけじめだから。

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