secret name ~猫と私~
猫は貴女を思います
セッテは佳乃が見えなくなるまで、その場に立ち尽くしていた。

彼女の気持ちには、応えられない。

自分には結婚を決めた人が居るのだから。

佳乃もそれを分かっていて、自分に気持ちを打ち明けてくれたのだろうが、今とても混乱している状態だ。
一方的に、返事も求められてはいないが、どう感情を処理していいか答えがでない。

いつの間にか握りしめていたビジネスバッグをつかむ手が、汗をかいているのに気が付いた。

自分の仕事が悪かったのだろうか。
今回の契約内容には、家事も含まれ、職場のでのサポートもあり、一日中一緒だった。
それは契約上仕方の無い事で、佳乃も分かっていてくれたはずだ。

(俺の仕事、あかんかったんやな・・・)

きっと、必要以上に近付き過ぎてしまったのだ。
佳乃と仕事をするのは、楽しかった。
彼女を支えながらの仕事は、自分の勉強にもなったから。
自分の仕事ぶりに比例して、佳乃の笑顔が増えていく。
その過程さえ楽しかった。
調子に乗るのは悪い癖か。

(・・・猫失格やん・・・)

そこまで近付いたという、自覚は無かったのに。

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