ガラスのお靴

シンデレラとか、童話物に憧れた乙女な時代もあったんだけどなぁ、


☆☆☆☆☆☆☆☆

「そういえばさぁ、あのにーちゃんなぜ自殺したのかな」
今まで振られたかわいそうな年下坊やの愚痴を聞いていたとは思えない、話題を振る。

愚痴を聞いていたからこそ、イライラして気分転換がしたかったのだ。

「しらねぇよ」
青い顔をして叫ぶ。
えーと、広たん・・・・広政か広隆か正式名を忘れた。

「私さぁ、結構憧れてたのよねぇ、あのにーちゃんに」

すぐ小さい子に合わせてしゃがんでお話してくれる態度とか、柔らかな口調、
ウチの頑固ですぐ怒鳴る父親や、女をバカにする時代錯誤の男子友達が割といるので、
ああいう物柔らかな優男は貴重だと思う・・・、広たんはただのヘタレで、
頼りなすぎて、男として論外、
かくいう年増の私も理想ばかり高く五月蝿くて、女として不出来なのだが。


「あいつに?気持ち悪いし怖かったのに?」
「怖いって・・・・なんで?優しかったじゃない」

私の物言いに首を傾げる広たん。
「多分、しっかりしたこにはそんなに意地悪しなかったんだろうな・・・。
ちょっと気の弱そうな子や、ボーとしていた子だったりすると、後ろから近づいて脅かしたり」
「それぐらい、いいじゃない」
「いや、小さい子にとって、後ろからいきなり抱きしめられたり身体を持ち上げられ振り回されたりって、結構くるよ
・・・人間って痛い思いや怖い思いをすると、脳の中からドーパミンだっけ?痛みを紛らわせるための物質を出すじゃん。

子供ってワケがわからず笑いまくっているけど、実際は泣きたいって時もあってさ、だのに大人は喜んでると勘違いするんだね・・・・。

そういえば、昔、僕が階段から落ちて骨折して痛がるより笑ってた時、誰も心配してくれなくてさー、
治療する時にようやく泣いたんだけど、そのときは、痛いから泣いたって言うより誰も心配してくれないことが悔しくて泣いたよ」

だって階段を堕ちるものすごい音に廊下に出れば、
小さな広たんが座り込んで、ケタケタ笑っていて・・・今思い出しても不気味な場面と言うか、
滑稽というか・・・・腕がありえない方向を向いていると気づくまで。



「だからさぁ、あのにーちゃんのそういうとこ嫌がる子は結構いたよ、嫌がると余計に追っかけていくし・・・・。
僕は怖かったね。
だから、くーちゃんを絶対あいつの家に独りで行かせなかったよ」

「えっ」
くーちゃんとは確か私のことだ・・・とかズレたことを思っている場合でなくて、
「怖かったのに」行かせなかった?
意味を私が考え込んでいる間、広たんは続けて話す。
「あいつ、小さい子を普段から虐めているって・・・・俺は思ってたから、
女の子を家に連れ込んでどういう意地悪するか、気が気でなかったんだ。
だから、くーちゃんについて行く時は、ヘタレガキのカッコつけだけど、護衛のつもりだったよ」

ほぅ・・・護衛ねぇ・・・小さいながらも・・・うーん。
ほんとに、そんな悪いにーちゃんには、思えんかったんよなぁ・・・・。

実はにーちゃんが自殺する前に、警察に呼ばれたのだと噂を聞いた。
にーちゃんの死体を見つける前に発見した女の子の遺体は外傷など一切なかったが、
両親も気づかなかった心臓の欠陥があったそうだ、

小さい子を嚇して楽しむにーちゃん、女の子が心臓が悪いと知らず、嚇して死なせてしまったのかもしれない、


「で、聞いてくれる~~~」
愚痴に戻る広たん、

「ええ加減、私をもらってくれる気になったら聞いてあげる」

私のこの言葉に広たんはしばし固まる・・・意味をつかみかねているようだ。
まぁ、私もいい加減だよね。
つい、今さっきまでこいつには男としての魅力さえ感じてなかったのに、


小さな護衛に、やられた様だ。


ガラスの靴を履いて白無垢も着たい年頃なのさ。

おしまい
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