初恋合戦
「ちょっと!どうしたのよ!」

「キョーレツに効くんでしょ、そのジンクス」

「そうよ。だからフクエってコに私たちを食べさせたら、

五十年はいきられるかもしれないじゃない。」

「うーん」

死ぬのはイヤだけど……。

「でもさ、病気ったってそれほどせっぱつまってるわけじゃないし」

「普通の学校いきたいんでしょう?」

「うーん…今おもうとそうでもないかなあ、って…」

「いいかげんにしろよ!」

チナツがキレた。

「オマエ、コワイんだろ。

神頼みでもなんでも、

効き目のあるコトしちゃえば運命どっちかに転ぶもんなぁ。え?」

「こわくはないよ」

……たぶん。

それか、もうずっと、感覚が麻痺しているのかもしれない。

いつから病気なんだろう、

いつまで病気なんだろう、

否いつまで病気でいられるんだろう、

いつ死ぬのだろう、

死んだらどうなるんだろう……、

そんなことばっかり考えすぎて。

「国会議事堂前ってのがどういう場所だと思ってんだ?

『苺大福合戦』の会場さ!

そんな場所に、苺大福サマがノコノコ行くかよ。

オマエのこと助けてやるって言ってんだろ?!

こっちは命懸けなんだ。

そりゃ人間サマにとっては取るに足らないだろうさ。

ケドちったぁハッキリしろや!」

「彼はまだ子どもだよ」ゴトウがやんわりと、

熱くなったチナツをクールダウンさせる。

和菓子界のアイスノンである。

「そんなに気が引けるんなら、

とっておきの裏技おしえてあげるわよ。」

口調を戻して、ややこしいからよくききなさい、と言った。

「苺大福の上には七人のカミサマがいるのよ。」

それはお米ではないだろうか。

「カミサマおこらせるとコワイんだから。

御利益が逆さになって働くの。ジンクスでもおなじ。」

だから私たちを、好きな人に投げつけなさいとチナツは言った。

「以後半世紀は両思いになれるわ。」
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