Happy christmas with you
君の表情
* * *


クリスマスイブまであと1週間。
俺は彼女を家まで送るために車を運転していた。助手席に乗る彼女の表情はどこか浮かない。最近は彼女の表情の変化に敏感になった。つまりは、分かるようになった。前よりもずっと。


「…どうかした?いつもより口数が少ないけど。受験の悩み?」

「…いえ…大丈夫です。」

「全然大丈夫そうに見えないんだけど。」

「…そうですか?」

「うん。…どっか寄ろうか。って言ってもこの辺もう何もないしなぁ…。うちに来る?」

「え!?」

「あ、嫌なら無理にとは言わないけど。」

「え…あの…嫌じゃ…ないです…。」


それでもやっぱり声のトーンが上がらなかった。…さすがに心配になる。受験生でデリケートな時期でもあるし。(もちろん彼女は学力的に何の問題もないのだけど、それはそれ、これはこれである)


「じゃあ、心配だから少し話そう。」

「…はい。」


今年の2月14日に想いが通じ、付き合い始めて10ヶ月。こうして思い起こせば結構長い。それでも彼女は高校生、しかも受験生なわけで。
…だから俺は手を出していない。これは声高々に宣言できる。キス以上のことはしていない。家に呼んだとしても、だ。


彼女が俺の家に来るのは今日が初めてじゃない。だからそれが彼女の浮かない顔を助長している原因とは思えない。
それなのに、彼女は一瞬驚いた。…躊躇ったとも言える。


…何かしてしまったのだろうか、無意識のうちに。そう思って自分の行動を振り返ってみるが、特に何も思い当たらない。もちろん浮気はしていないし、最近は寄ってくる女性の利用者も減った。だから、彼女が不安に思ったりする要素はない、はずだ。


「どうぞ。」

「…ありがとうございます。」

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