戦国より愛を込めて 【六花の翼・番外編】
博嗣は一人庭に立ち、ぼんやりと抜き身の刀を見つめていた。
刃に日光が反射し、それは不気味に光る。
「あ、お疲れ様でした、姫様」
私の視線に気づき、博嗣は刀を降ろす。
すぐにそれを鞘におさめると、縁側に静かに置いた。
「……子供たちは……」
「はい、手習いの練習中です」
「そう」
私はそのまま縁側に腰を下ろした。
すると博嗣も草履を脱ぎ、すぐ近くに座る。
そして、ごほんと咳払いをした。
「何よ」
「……姫様。東雲にお嫁に行かれるのですか?」
「行くわけないでしょう」
この人まで、何を言い出すのか。
私はもうぐったりと疲れて、話したくなくなってしまった。
博嗣といて、こんな風に思うのは初めてだった。
しかし、そんな不快も続きはしなかった。