夕焼け空に泣く
仕事




家から自転車で20分



信号が味方したなら
15分のところにある




カラオケ屋「ゆめの」




居酒屋みたいな名前だ



チェーン店ではないのか

ボロ臭い



部屋数は10ちょっとしかないくらいの

小さな店




求人広告に載ってたわけじゃなく



たまたま店を通りかかったときに

アルバイト募集の紙が貼ってあった






「失礼しまーす…」


電話で指示されたとおり

店の裏口から入った




「おぉ…、こんにちはー」


「あ、…はい
こんにちは」




店長は30前後の
能天気そうな男性

顔はイケメンでもブサイクでもない







「履歴書は持ってきたー?
あ、座って座って」






「あ、…はい」


初めての環境は
やはり少し緊張する






「ふーん…
ハタチなんだね」



「はい…」



店長は履歴書を一通り目を通して

履歴書を机に置く






「緊張してるの…?
普段通りでいーのにー」



店長が
優しそうに笑う






私は騙されない


会って3分の他人に
心を開いてたまるか






「家事頑張ってるんだね、
ほら…肌綺麗のに手だけ荒れてる」




「あ…」



店長が私の手に触れる




何だこの人は…


良い意味でも悪い意味でも距離を感じない






「まぁ、以上で!
お疲れ」




「え…?」



店長が立ち上がって
トイレに入った



「あ… あの!」





「あ~
ごめん! 言い忘れてた
採用だから!
またケータイに連絡する!」




トイレから聞こえる声







この店
色々と大丈夫だろうか

< 5 / 6 >

この作品をシェア

pagetop