猫が好き!


 不採用の数を積み重ねるごとに進弥は、暇潰しで始めたハッキングにのめり込んで行った。

 侵入したサーバに、時々コンピュータウィルスを置き土産にして、パニックに陥る様子を想像しながら、虚しい自己満足に浸る。

 そんな事を繰り返しながら、入手した顧客リストをアンダーグラウンドで販売したら、思いも寄らない高値がついた。

 何度か販売している内に、情報入手の依頼が来るようになった。

 入手した情報を業者に売って金にしようとする奴や、出世の足がかりにしようとする奴。

 ”シンヤ”に情報入手を依頼するのは、そんな奴らだ。

 自分を食い物にした先輩を思い出し、怒りがこみ上げてくる。
 欲に目のくらんだこいつらを、今度は自分が食い物にしてやろうと、多額の報酬をふっかけた。

 それでも依頼は、途絶える事がなかった。

 そうして進弥は、闇の世界に墜ちていった。

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