デキちゃってない結婚



 四



 福岡の空は曇っていた。それと同じように本田真理子の顔も曇っていた。

相変わらず仕事中は椅子に座りっぱなしの真理子は完成に近づいたセーターを網ながら、金子美月のことを考え何度も溜め息をついていた。

そんな真理子を心配そうに眺める橋本夏歩は、真理子と美月の間に何かトラブルが生じ、そのことで真理子が悩んでいるのではないかと心配していた。

夏歩が真理子に「何かあったの?」と質問をしてみたが、真理子はかなり驚いた様子で、 慌てて立ち上がり右往左往していた。

「べっ!べっ!別に!純一君とは何もないでっせぇ!」

< 212 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop