東條くんのとある1日



「東條くんってさー、モテるのに喋んないよね」

「…、」

「喋ればもっと女の子ファン増えるよ?」


「俺は、」





ぱたんぱたんとお弁当箱をしまいながら小さく呟いた彼の言葉は小さすぎてあまり聞き取れなかった。

行くぞと言いながら立ち上がってしまったその背中を追いながら急いで私もお弁当を片付ける。



「東條くん待って待って!」

「やだお前とろいもん」

「東條くんがすばやすぎるの!」

「あー。トロロ食いてぇな」

「意味がわからないっ」

「あほ」


ぴんっと私にでこぴんしてくしゃっと前髪をかき混ぜた。

意外と至近距離にあったその綺麗な顔が恥ずかしくて、前髪を直すフリをしながら目をそらした。



さっきね、あんまり聞き取れなかったけど。ほんとはちょっと聞こえちゃったんだ。

「俺は、」の続き。


かなり嬉しかったから胸にしまっておこう。みんなに囲まれる東條くんへの寂しさも我慢できそうだ。







「俺は、菜乃がいれば十分なんだよ」










PM12:36
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