衆議院議員◇真実 一路◇
「ちょっと待って下さい、総理!」
「ん……?」
不意に私に呼び止められ、不思議そうな顔で総理が振り向いた。
「何だね、真実君?」
「私が総理の時計を見つけたのですから、『謝礼』を頂きたいのですが?」
「謝礼?」
総理は私の言葉に一瞬、キョトンとした表情を見せたが、すぐに笑顔に戻りこう言った。
「そうだったね、今度一緒にメシでも食おう。私が奢るよ♪」
しかし、私はその総理の言葉を遮りこう付け足した。
「いえ、『謝礼』とはそういったものでは無く、落とし物を拾った者が持ち主に正式に請求できる『10パーセント』の謝礼の事です!」
「何だって?」
首を傾げる総理に向かって、私はもっと単刀直入に言った。
「そのロレックスは200万円もしたのだそうですね?
でしたら、200万円の10パーセントで『20万円』私に下さい!」
総理は、私の言葉に大層驚いていた。
周りにいた議員も驚いた顔で、ざわざわと囁き合っていた。
幹事長だけは、好奇心に満ちた目を爛々と輝かせていたが……
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