Only You
 私に命みたいな歌を吹き込んでくれた人のCDを買った。
 まだ売出し中のその人は、笑顔で”ありがとう”って握手をしてくれた。
 この人ならきっと売れる。
 衝撃的なメッセージをくれたこのCDとの出会いは、私にとって本当に大切なものになった。


”エルへ

昨日はメールしなくてごめんなさい。
本当はね、職場であなたとの付き合いを色々言われて悩んでたの。

それを心配して長坂さんは色々気を使ってくれてただけなの。
余計な心配させてごめんなさい。

あなたから少しでも離れようとした自分を後悔しました。
容姿で悩む自分を卒業したい。
綾人さんが綺麗だって言ってくれる言葉を信じたい。
またあなたの腕に抱かれたい。
ひなたの匂いがするあなたの体に思い切り抱きつきたい……。

コンプレックスの塊の琴美を好きだって言ってくれてありがとう。
また明日からあなたのミサに戻ります。

ミサ”


 CDをかけて、そこから必死で勇気をもらいながら私はエルにメールを打った。
 これをエルがどう捕らえてくれるのか、ドキドキしたけど……あの人との関係を、少しでも自分から壊そうとしてしまった自分を反省してる事が伝わるといいなと思って送信した。


 次の日、やっぱりそれとなく陰口が聞こえる給湯室に普通に入ってコーヒーを作った。
 女性3人だったけど、皆驚いて私を見る。
 何も聞こえて無いそぶりで、私は挨拶だけしてその場を去った。

 友達がこの会社にいる訳でもない。
 悪口を言う人と一生暮らさなきゃいけない訳でもない。
 私が一番大事だとおもうものを、ただ守ればいいんだ。

 でしょう?エル。

 あなたはそういう生き方を推奨してくれていたね。
 忘れるところだったわ。
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