Only You
「きゃー、あのゴールデンコンビすごいよね!」
「ほんと~。遠藤さんピンチ感じてるんじゃない?あの美人じゃあねえ……相当危険だよね。一度別れてたって、毎日同じ車で移動して歩くんだから何もないわけ無いよ!!」
「うわ、それってスキャンダル」

 ほんとに……女性って、こういう話をしてる時にどうして生き生きするのか教えて欲しい。
 私はもう特に気にする事もなくて、普通にその話題の間に入って行った。
 平気で歯磨きをしてる私を見て、香澄ちゃんはじめ女性職員がいぶかしげな顔をしている。

 ピンチを感じないと言えば嘘になるけど、今私がそれで気をもんだところで現実は変えようがない。
 天海さんと綾人が組むのは会社からの命令だし、仕事だと割り切れないほど二人も子供じゃない気がする。
 
 だから、私は多少の無理をしてでも彼らの事は応援するつもりだ。


 もう一つの出来事。
 それは私が長坂さんにダイレクトに告白された事。
 帰宅しようとしてたところを呼び止められて、かなり真面目に言われた。

「笹嶋と付き合ってるのは知ってるし、幸せなところを邪魔する気は無いんだけど。でも、気持ちだけは伝えておきたくて」

 こんな事は生まれて初めてで、私はどんな顔をしていいのか戸惑ってばかり。答えも見つからない。

「遠藤さんの事は本当に……将来も考えたいほど思ってる。迷惑だったらこのまま聞き流していいよ。ごめん、呼び止めたりして」

 私の言葉は一つも聞かないで、彼は急いで職場に戻っていった。
 あんなに余裕のない長坂さんは初めて見た。
 私は告白なんてされるのは綾人が初めてだったし、本当に恋愛経験が無いから戸惑ってしまって、その場にしばらく呆然としていた。

 どうしよう……。
 でも、どうしようもない。

 真剣に思ってくれてるのは分かったし、嬉しくないわけではなかったけど、やっぱり綾人と暮らしている事実を考えても私には聞き流すとういう方法をとるしかなかった。
 綾人には黙っていようと思ったけど、その日の私はどうも上の空だったみたいで追求されてしまった。
 彼に比べたら私は本当にまだまだ役者としての素質が甘い。
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