Only You
 そんなエルとのメール。
 今日も私は真面目な事を語ってしまった。
地が出てしまうのか、あまり私のメールはテンポとか内容が明るくならない。


“エルへ
エルには友達っていますか?
私には数人そういう人がいるけど、エルに話してるほど全部を語ってる人はいなくて……。
そういう意味で私はエルが唯一の親友なのかなって思ってます。どんな話もきちんと受け止めてくれてありがとう。こうやってあなたとメールする時間が私には幸せなひと時です“


 こんな他愛の無いメールにも、彼はきちんと返事を返してくれる。


“ミサへ
メール読みました。
友達ってなんだろうなってちょっと考えたよ。
遊ぶ友達、悩み相談する友達、ただの飲み仲間。色々あるけど、ミサのメールで考えたら確かに僕も君にしか言ってない事がたくさんあるよ。好きな動物の事とか、将来どこに住んでみたいかとか……そんな話し誰ともしたことないよ。
だから、僕にとっても君は大事な親友だと思う。
こちらこそいつも大事な事を教えてくれてありがとうっていう気持ちでいっぱいです。“

 こんなメールを読むと、私の心が外でいくら傷ついていても半分は癒えてしまう。

 エル……どんな人なのかな。
 年はすごく上の人なのかな。
 でもおじさんっていう文章には見えないし、もしかしてすごく若い人なのかな。
 それすら分からない。


 そんなメール交換を続ける中、私は笹嶋さんにいきなりデートに誘われた。

「え?」
「駄目なら断っていいんだけど。ずっと誘おうと思ってたんだ。花好きだって言ってたから、ガーデニングショー見に行かない……?」

 当然私は頭がショートして何も考えられなくなった。

「遠藤さん、どうしたの」

「あの……すみません。私、そのショーは別の人と行く約束で……」

 とっさの馬鹿な嘘をついた。
 一生に一度のチャンスだったのに。自分から棒にふった。

 笹嶋さんは少しガッカリした表情をしたけど、すぐに「そっか、ならいいよ。また誘うね」とだけ言って爽やかに仕事に戻っていった。

 心臓がバクバクしている。
 どうしよう……。
 何で笹嶋さんは私なんか誘ってきたんだろう。
 他にも若くて可愛い子いるのに。
 からかったのかな……。でも、彼はそんなタイプに見えないし。

 断ったの感じ悪かったかなあ……。

 この日から私はどんんどん「見てるだけでいい」はずだった笹嶋さんを意識してしまうようになった。
 顔も見れないし、声をかけられてもそっけなくしてしまう。

 まずい……このままでは嫌われてしまう。
< 4 / 103 >

この作品をシェア

pagetop