Only You
 強い女を演じる必要は無かった。
 考えてみれば、私が自然体で笑っていたから綾人との生活は快適だった。
 泣いてても、少しすねていても、それが本心だったからそれ以上心を探り合おうとしたりしなかった。
 それが信頼に繋がっていて、言葉とかメールの文字を不要なものにしていた。
 私が苦しんでいれば、心がリンクしている綾人だって苦しかったに違いない。
 どちらかが笑顔で、どちらかが泣いてる関係の方がおかしいのかもしれない。

 それに気付かないで、私は自分さえ笑顔を演じていれば綾人は安心して東京で暮らしているんだと思っていた。

「嫉妬ってすごく嫌なものだね。長坂に対する気持ちは、今まで感じた事が無いほど強い負のエネルギーだったよ。あればっかりは僕も笑って見過ごせなかった。だから、琴美が長坂に心が動いたって言われてすぐフォローに入れなかった」
 
 綾人も素直に私に心の中を告白してくれた。
 天海さんとの事は本当に噂だけが走っていただけみたいで、彼女が指輪をしていたのは別の人と婚約したせいだと聞かされた。
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