先祖返りな私達

いつも隣に。

「…暑…」


私は、大きな木の日陰でうなだれていた。


隣には、いつも一緒に居るアイツ。


くりくりした黒い目に、


染めたのか知らないけど、


黄緑のこれまたくりくりした髪。


童顔なソイツ、私の幼なじみで


同じ先祖返りの坂本龍爺(さかもとりゅうや)


坂本龍馬の先祖返りだとか。


「ほたえな〜」


龍爺も、だらだらと汗を流している。


せっかく新しいワンピースなのに、


すっかり泥だらけにして。


だからといって誰かに怒られるわけでは


なかった。私は、


先祖返りだから。


ただ、そんな理由で大事に大事に


育てられた。北条家の使命を果たす者


傷つけるべからず。


ふざけてる。皆私を気遣いすぎて、


逆にこっちが気を遣わなきゃいけない。


5歳の夏。


自分と、いつも隣にいた龍爺は、


普通の人じゃないと知った。
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