不遜な蜜月
現実的な話を持ち出されると、言葉に詰まる。
真緒は目を伏せ、唇を噛んだ。
「俺なら、君の不安をすべて取り除ける」
「・・・・・・どうして急に、そんなことを言うんです?」
心変わりしたにしても、唐突すぎる。
理人が自分でというより、誰かに言われて、と考えてしまう。
「子供が生まれたら、離婚するつもりじゃ―――」
「そんな真似はしない。祖父、いや会長と言うべきか。会長が、君のことを知ったんだ」
理人が望んだことではないにしても、悔やんでいられない。
今は、彼女に結婚を了承させなくては。
「会長も祖母も、俺に早く結婚してもらいたいと思ってる。そこに、君が現れた」
「・・・・・・あなたの意志じゃないわ」
なんでだろう、胸が苦しい。
会長に言われたから、結婚するの?
じゃあ、言われなかったら?
「・・・・・・」
「香坂。悪い話じゃない。君は何の心配もしなくて済むんだ」