家元の寵愛≪壱≫
十四 愛の秘密兵器


1月も残す所、あと僅か。


毎朝、凍るような寒さの中、

自己研鑽する為、茶を点てる日々。


習慣とは恐ろしいもので、

地方稽古で赴いた先でも時間になれば、

自然と目が覚め、身体が動き出す。


骨の髄まで『茶道家』らしい。



約1週間の地方稽古を終え、愛妻が待つ自宅へ。


ん?

何故か、離れの玄関に鍵が掛かっている。


もしかして、母屋にいるのか?



帰宅早々1番に、

ゆのをこの腕で抱きしめたかったのに。


仕事の疲れを癒す最大限のご褒美はどこに?


俺はその足で母屋へと向かった。



ん? おかしいぞ??


母屋の玄関に、ゆのの靴が見当たらない。

もしかして、母さんと外出でもしてるのか?



仕方なく、親父に帰宅の挨拶をしようと

廊下を歩み進めると、



< 253 / 450 >

この作品をシェア

pagetop