家元の寵愛≪壱≫


庭先に止めてある車の前で、


「ゆの」

「はい」

「俺は少し寄る所があるから、先に帰っててくれないか?」

「あっ、はい」

「俺が戻ったら外出するから、出掛けられるように用意しとけ」

「はい」

「じゃあ、気を付けて帰るんだぞ」

「はい。隼斗さんも、安全運転で」

「ん」



俺がプレゼントしたポシェットの

ショルダー部分をギュッと握りしめているゆの。


いつも大事そうに使ってくれている。

そんな些細な事にも嬉しくなって、思わず彼女を抱き寄せた。



「ッ////………隼斗さん////」

「フッ、誘惑は程々にしろよ」

「ッ?!////してませんよ………そんなにも/////」

「?!」


…………そんなにも?


フッ、本当にどうしてくれよう、この娘。


最近まで『煽る』事すら知らなかった子が

今じゃ、この俺を煽り立ててる。


ホントにマジでヤバいだろ。

これ以上、装備を増やしたら……

俺は完全に瞬殺でヤられるな。



そもそも、溺れている時点で

――――――俺に勝ち目はないって事か。


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