光と闇さえ叶わぬ願い

〜風〜

「おまたー。待たせて悪いな、千春。」
「お疲れ。全然大丈夫だよ。ここのコーヒー美味しいし。」

やっとバイトを終えたオレーーー風早翔は、友人である千春と共に、本家に顔を
出すためにある人を待っていた。

水模 綺斗。
コイツがまた厄介で…。
オレ、少しニガテなんだよね…。
でも千春がフツーに絡んでるから、ヤバいヤツではないと思うけど…。

「そろそろ綺斗も来ると思うよ。今、講義終わったって連絡来たから…。」
「そっか。別に急がんでもいいけどなぁ。」
そんななんでもない会話をしてるオレ達の前に、ウェイトレスが現れる。

「ご注文はどうなさいますか?」
「んー。んじゃ、ホットコーヒー。ブラックで。」
「かしこまりました。以上でよろしいですか?」
「ん。大丈夫。」
「はい。それでは失礼します。」

そしてウェイトレスは戻って行った。


「あっ、そうだ、翔。なんかね、本家入りしてないの、もう僕と翔だけだって。」
「マジで!?もう皆本家入りしてんのか?」
「らしいよ。僕は今日にでも本家入りしても大丈夫だけど…。翔、どうする?」
「んー。オレも本家入りは全然問題ないんだけどな。親が…。」
「あっそうか。どうしよー。」
「お待たせしましたー。」

そんな話をしてしているうちに注文を聞きに来た別のウェイトレスがコーヒーを持ってきた。


「そうしたら、お前だけでも今日本家入りしろよ。オレは早ければ明日、遅くても来週中には本家入りするから…。」


そう言いながらオレはコーヒーを飲み始めた。
―――本当だ…。このコーヒーうめぇ…。

「…本家入りするんだったら、暫くバイト入れないかなぁ…。あっでも、昼間なら大丈夫か。昼間は規制されないもんね。」

そんなことを言ってから千春は、もう何杯目か分からないコーヒーを飲み干す。

その時…

          カラン カラン。

店に誰か入って来た。





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