Fragile~思い出に変わるまで〜
ほんとなら二人で喜んでお祝いすべきことなのに……


憂鬱な気持ちになりながら、抱えていた便器から体を起こす。


のろのろと立ち上がると、センサーが反応して勝手に水が流れた。


ぼんやりとその渦巻いている水を眺めていると、自分の嫌な気持ちまで流れていってくれるような気がする。


トイレを出て洗面所で口をゆすいでから顔をあげる。


そこには、ひどくやつれて疲れた顔をした私の顔が映っていた。


こんな顔してたら、健が私を見ないのも仕方ないか……


試しにニッコリ笑ってみる。


それでも落ち窪んだ目とコケた頬の筋肉が少し上がっただけだった。


どうしようもない今の現状を呪いながら、リビングに急ぎ財布の保険証を確認してバッグに突っ込む。


そのまま車のキーを掴んで足早に玄関を出ると、見知った産婦人科へと急いで出掛けた。


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