Fragile~思い出に変わるまで〜
ほんとはこんなこと言いたくないのに、それでも確認しないと安心できなかった。


健は露骨に嫌そうな顔をして、少し苛立ったように答えた。


「あたりまえだろ?

さっきもそう言って別れてきたばっかりだし

変に勘繰るなよ」


強い口調で言ってるくせに、相変わらず健の目は、私を見てない。


急に胸が苦しくなった。


涙が出ないように目をギュッとつぶると、鼻の奥がツンとする。


健は藤森さんへの思いを忘れられないでいるんだと思った。


私のために会わないことにしたんだと言わんばかりだ。


その苛立ちからもそれが伝わってくる。


なにか……あったんだ。


そう確信せざるをえなかった。


妊娠したことなんか到底伝えられない。


深い悲しみを悟られないように、私はそっとその場を離れた。

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