Fragile~思い出に変わるまで〜
懐かしい顔を見ながら声を掛け合い、昔話に花が咲いていると、ふと聞き覚えのある少し高めのはにかんだような声が廊下から聞こえた気がした。


思わず入口の扉を見てみると、年相応にはなっていたものの、変わらない笑顔がそこにはあった。



――藤森?




しばらくぼーっと見つめていたらしい。


彼女が何かに気づいたように、こちらを向きそうになった。


そこでようやくハッとした俺は慌てて目を反らす。



――何やってんだ、俺は!子供じゃあるまいし。


そんな自分に動揺しながら、なんとか平静を装おうと、目の前の料理に箸をつけるふりをしてごまかした。


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