Fragile~思い出に変わるまで〜
俺は諦めたように息を吐くと、テーブルに置いてある紙切れを眺める。


そしてこれでさとみが楽になれるならと、自分の名前を署名して、隣にある印の欄に自分の判をギュッと押し付けた。


書き上げた書類を折り畳むと封筒に入れる。


さとみに返送しよう。


どうしても自分の手で離婚届けを出すことはしたくなかった。


さとみに送り返して、さとみに提出してもらいたかったのだ。


相変わらずずるいな……俺は。


さとみがもし提出しなければ、離婚は成立しない。


そんな一縷の望みをかけていたのかもしれない。


ボロボロになりながら、優しく温かかったさとみのぬくもりを思う。


そして現実から逃れるように缶ビールを飲み干した。


ここ数日、酒の力を借りないと眠れなくなっていた。


今日も買ってきたコンビニのつまみでビールや焼酎を開けていく。


ようやくソファーに倒れ込むと、缶が散乱した中で、俺は無理矢理眠りについた。


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