Fragile~思い出に変わるまで〜
「ありがとね?

桜井くんにはいつも元気をもらってる気がする……」


そうお礼を言うと、彼は恐縮しながらも嬉しそうに答えた。


「いや、俺なんか全然役に立ってないですけど……

でもそう言ってくれると嬉しいです

少しでも元気になってもらえるんなら、いつでも電話ください」


一人でがんばってこの子を育てると決心した日から、私は無理してたのかもしれない。


桜井くんに自分を気にかけてもらえたことで、こんなにもほっとするなんて……


でもこれ以上、彼に迷惑かることは出来ない。


そういう存在がいてくれると思うだけで、心が強くなる気がする。


それだけで充分だ。


私たちのゴタゴタにこの人を巻き込んじゃいけない。


彼とはもう連絡を取らないようにしなければ……


私は何度もお礼を言ったあと、静かに通話終了ボタンを押した。


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