Fragile~思い出に変わるまで〜
けれど俺は、彼女が何も言わないことにそのまま甘えていた。


ただひとつだけ気になっていることがあった。


藤森をさとみと間違えて抱いてしまったあの日から、彼女はそういう関係を俺に求めてくることはなかった。


ひながいるせいもあるかもしれないが、そういう雰囲気になるのを避けているような気がする。


藤森との初めてがあんな形になってしまったことは申し訳なく思っているが、彼女はそれでもいいと納得してくれたから一緒に暮らしたんじゃないのか?


彼女が何を考えているのかが、時々わからなくなり不安になる。


「たけるぅ、いってきまぁす!」


一生懸命手を振るひなに、俺はしゃがんで目線の高さを合わせた。

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