Fragile~思い出に変わるまで〜
胸ぐらを掴まれるくらいの勢いで、俺に顔を近付けながらそう言った桜井の目は、とても酔ってるようには見えない。


「ちょっ!桜井、近い!

わかったよ!ちゃんと言うから……」


慌ててそう言うと、桜井は大人しくストンと自分の席に座って俺が話し出すのを待っていた。


俺は、はぁ……と小さく溜め息をついてから、仕方なく話し始めた。


「そうだよ……俺はいまだにさとみが忘れられないし、愛してるよ……

離婚してからもずっと忘れた日は1日だってなかった

逆に時が経てば経つほど……さとみが恋しくて仕方なかった……

あやとひなには悪いけど、さとみを失った悲しみと寂しさを埋めるために結婚したようなもんだったかもしれない……

最低だな?俺は」


部下である桜井にここまで言う必要はないんじゃないかと思った。


でもいったん自分の気持ちをさらけだすと、止まらなかった。


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