彼はクールフェイス☆
どうしてやろうかしらと思ってヒナタを見上げると、なんかどうでもよさ気にそっぽ向いてる。
「ん~……じゃこれからヒナタに手を出さないでください」
「だとよ。守らなかったらわかってるよな?」
「わ、わかったよ」
バタバタ逃げて行く背中を見送りながら、もうため息つくしかなかった。
「せっかくのデートが台なしだぁ」
「……悪かった」
いつの間にかヒナタがこっちを向いていた。
やだ、そういうつもりで言ったんじゃないのに。
「違うの。ヒナタが悪い訳じゃないよ」
「………」
「まぁまぁ…今日は俺が許すから今から行ってこい」
「お兄ちゃんいいの?」
「特別な。婆ちゃんには言っといてやるよ」
「やった♪ヒナタは?時間ある?」
コクリと頷くのを見ると、もう嬉くてヒナタの腕に飛びついた。
「あ~…あんまりベタつかないように」
コホンと咳ばらいするお兄ちゃん。それを見たヒナタは、珍しく頭を下げた。
「お借りします」
ビックリした…普段のヒナタからは想像もつかないようなことを……いや、別に普段がふてぶてしい訳でも傲慢な訳でもないんだけどっ。
それでもこんなに謙虚なヒナタ初めて見たから。
「あ~……まぁ妹のこと、頼むわ」
お兄ちゃんもヒナタの独り歩きしてる悪い噂は聞いてたらしい。
最初は誤解してて、付き合ってるって言ったら反対してたけど、実際自分の目で見て、確かめて。それで認めてくれたのかな♪
「よし、行こっか♪」
ヒナタったら別れ際に、律儀にお兄ちゃんに頭下げちゃって♪
「あ~ぁ、私もお腹すいちゃった~」
「………」
「な~んかお腹いっぱい食べたいね」
「ん……」
ヒナタと腕を組ながらゆっくり歩き出す。
見上げると、横顔に汚れ発見。
「ちょっと屈んで?」
素直に身を屈める。顔に手を延ばす。汚れを落としながら、ヒナタに触れている時間がなんとも幸せだった―――