彼女が変身した事情
ふあん




「あの………やっぱり無理!」

「無理じゃねーってば」






連休明けの朝、今は奈月邸。
一足早く学校の用意を済ませると、朝飯にありつくべく優のうちに行ったはいいけど………





そこには、身体にジャストサイズな制服に見を包んだ優。
お袋に頼んでた物だ。
可愛い、超似合ってる。




なのに優の奴「無理です、無理無理!こんな短いスカートじゃ外歩けない!」な~んて、くだんねぇことで大騒ぎ。




用意されてた朝ご飯をぱくつきながら、只今呆れて説得中。




「だから似合ってるって。どっからどーみてもイケてる。大丈夫」

「そんなこと思うのは良介だけ!彼女のひいき目です!」





涙目になりながら、必死でスカートの裾を引っ張ってる。
いや、そんなことやったって伸びねーし………




連休中の特訓で、タメ口と呼び捨てにもだいぶ慣れてきた模様。
そりゃそーさ。敬語使ったら、ペナルティとしてキス一回の刑に処すという、俺の涙ぐましい努力の結果だから?(俺としては超おいしい罰ゲーム♪)
慣れない訳にいかねーよなぁ、恥ずかしがりの優としちゃぁ。




「はい、一回」





フォークを振り振り、冷蔵庫に貼ってあるホワイトボードに『正』の字の一本を書く。





「あっ?タンマ!」

「待ったな~し」

「え~……」

「何、そんなに俺のキス嫌な訳?」



わざとそっぽ向いてふくれて見せる。

俺の機嫌が悪くなったと思ったのか、慌てて様子を見に寄って来る。



「どーせ気持ち良くないんだろ?苦痛なんだろ」

「違う!そんなことありませんから!常磐さぁ~ん」

「はい、三回ね」

「ええっ!?」




ますます混乱してるよ………可愛い。



そっぽむいたまま、ふと考える。
こんなに可愛くなった優見たら、野郎達に狙われんじゃねーの? ムカツク。見せたくねぇ!



そっ



不意に俺の首に遠慮がちに回される腕。
優しくて柔らかい触り方。
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