恋愛流星群

 一頻り涙を流し終えた私は、自分から俊さんの胸を離れた。
 名残惜しい、なんて、もう感じなかった。

「ごめんなさい」

 私達の間には、それ以上会話はない。会話なんて必要ないのだ。

 フロント前に置かれた自動精算機のお釣りを落とす音が、寂れたホテルのフロアに響く。

 外に出て、違う方向へ歩き出す二人の歯車は、もともと噛み合う形には作られていなかっただけの話。

「はぁ……」

 出し尽くしたと思っていたため息は、濁った空気に溶けて消えていった。


end.
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