ブラック王子に狙われて②


ラグの上に横たわらせ、彼女を見下ろしながら

テーブルの上に置かれたスマホの更新ボタンを押してやる。

すると、『Rainbow Bridge』の公式サイトから、

『SëI』の未発表の曲、『Eyes』が流れ始めた。


片思いのような切ない歌詞から始まり

その想いが膨らんで焦がれてゆくみたいに

曲調が少し明るめになり、

サビは彼女への告白のようなきゅんとする歌詞が込められていて。

よくある『お前を見てる』ではなくて、

『これからも、俺を見てて』的な甘く切ない曲。

特定の人がいる前提で書かれたであろう、その歌詞に。

絢の唇を塞ぎながら、ちょっと胸が甘く疼いてしまった。


だって、俺も。

当然、絢をずっと見続けてるんだけど。

それ以上に、俺だけを見続けて欲しいから。

他の男に目移り出来ないほど、

その瞳にはたった一人だけを映して欲しくて。


たった4分ほどの曲。

だけど、奴が売れるのが分かった気がした。

心を揺さぶる歌詞と演奏とその歌声に。


「いい曲だったな」

「もうっ/////全然集中して聴けなかったじゃないっ!」

「何で?」

「何でって……け…ぃっ(くん)のせいだからねっ//////」

「つーか、俺とキスしてるのに、他の男のことを考えんなっ」

「っ//////」


口から漏れ出しそうになる『くん』という言葉を

頑張って必死に呑み込んでるのが可愛すぎるっ。

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