ブラック王子に狙われて②
「絢のこと、よろしくね」
「……はい」
「買い物に行って来るけど、お夕飯、何がいい?」
「何でも大丈夫です。アレルギーも好き嫌いも無いので」
落ち込む娘を慰めて貰いたいという願いが込められた視線。
俺は優しく微笑んで再び会釈した。
*
「絢、少しは休憩したら?」
「大丈夫っ」
力加減が極端というか。
余程ショックだったようで。
半泣き状態で、無我夢中で勉強に打ち込んでる。
進学先が決定してるわけだから、
実質のところ、卒業までのんびり過ごしたって構わない。
けれど、今の彼女にはそれが通じない。
一度気を緩めた結果に、完全に打ちのめされたわけだから。
分からなくもない。
俺だって、これまで何度も悔しい思いをしたから。
それを表に出さなかっただけで。
「絢」
「……なぁに?」
英語の長文を何度も書き写してる絢。
手元に視線をロックして、俺の方を見ようともしない。
そんな彼女の頭を掴んで、俺の方に向けさせる。
「俺の話、聞いて」
「……ごめんなさいっ」
「誕生日プレゼント、何が欲しい?」
「え?……あっ」