ブラック王子に狙われて②


「風邪ひかない?わざわざシャワーしなくてもよかったのに」

「洗い上がりの方がセットし易いから」

「そうなんだ」


タートルネックのセーターの上にシャツとブラックデニムを合わせて。

ダークグレーのロングコートを羽織った彼から

彼愛用のシトラス系の香水の香りがふわっと漂う。


私の手をぎゅっと握り、

その手は彼のコートのポケットに収められていて。

ポケットの中に忍ばせてあるカイロで指先が温かい。


今日は『した事ない事をしよう!』という提案で。

彼と初めてボウリング場へと。

ゆずとは何回か来たことがあるけど、

慧くんとは初めてで。

ちょっと緊張。

スコア的にはあまり良くないんだけど

日本を離れる前にやりたい事をやり尽くそうということになって。


「絢、靴のサイズ23だっけ?」

「ん。……あっ、自分で払うよ!」

「ほれ」

「あ、ごめんね。ありがと」


フロントで受付してる間に彼がシューズを用意してくれた。

ボウリング場の午前中は空いてるとゆずから教わって

開場直後に入ったこともあり、すんなりとレーン確保。


慧くんは、やっぱり超人らしい。

彼に苦手なものはないのだろうか?

軽々とストライクが出て、ちょっぴり羨ましい。

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