ブラック王子に狙われて②
「過保護というほど桐箱に入れて育てたわけじゃないですけど、この3年間、毎日少しずつ手放すための努力をして来ましたから」
「そういう期間がうちらにも必要だな」
「そうね」
ゆずちゃんの父親の意見は至極当然だ。
俺に一人娘がいたら、たぶん即答は出来ないだろう。
優しい眼差しを向けてくれる絢の両親に深々とお辞儀した。
「大事な娘さんを攫うような真似を許可して頂き、本当に感謝してます。有難うございます」
「慧くん、娘を宜しく頼むよ」
「はい」
「やだっ、私が絢ちゃんを嫁に出すみたいで、泣きそうだわっ」
ゆずちゃんの母親が、目に涙を滲ませた。
昔からよく知っているからだろう。
俺らは本当に恵まれている。
交際自体を反対する親も多い中、
交際を許可して貰い、こうして温かく見守って貰って。
その先も、当然のように受け入れてくれる両親達に
感謝してもしきれない。
俺らは、感謝の気持ちも込めて
両親らに花束を手渡し、お酒を次に回った。
そして、一番大事なことは
約3年前に出会い
心変わりもせずにずっと想い続けてくれた恋人に
最大の感謝を込めて……。
卒業は新たな人生のスタートだ。
そのスタート地点に
同じ相手がいてくれることが何よりも嬉しくて。
「これからもよろしくな」
「こちらこそ、よろしくね」
~FIN~