恋愛喫茶店 ~恋と一緒にスイーツを~

魔女の魔法?



「い、いや、ここにいますってば。はいはいは~い。」


手を挙げて、声を上げての全力の自己主張。でも、そんな私の全力の自己主張は、


「宮本せんせーい。綾瀬さんは9時から9時50分までの間『だけ』いなくなるそうで~す。」


クラスメイトの声に掻き消される。それも、やっぱり意味不明だった。


「ね?知ってる?成瀬君ってさ、今日の9時半ちょうどに発車する電車に乗るんだってさ。」


「うん。知ってる知ってる。あの商店街の近くにある駅だよね?確か、1番のりばだったっけ?」


「ちげーよ。2番のりばだって。あそこの駅は、1番のりばと、2番のりばが隣接してるから間違いやすいんだよ。案内板もないしな。」


途端に教室中がざわめき出す。今は授業中なのに、普通なら私語は厳禁のはずなのに。

なのに、宮本先生は注意せず、何も喋らない。・・・よく見ると小さく笑っていた。


トントンと肩を後ろから叩かれる。後ろを振り向くと、ミィが手を合わせてごめんなさいをするポーズで、


「ごめんっ!コト!私、魔女みたいに魔法使えないから、皆の力を借りちゃった!」


私に向かって、魔法が使えなかったこと、自分は魔女なんかじゃなくて、ただの人間だということを素直に白状した。


「ううん。ありがとう。立派で、凄い魔法だよ。」


クラスの皆が50分間だけ、私を『いるけど、いないことにしてくれる』。

それがミィの使った魔法だった。
< 74 / 106 >

この作品をシェア

pagetop