溺愛ごっこ
コトンと、マグカップをテーブルに置いた。

「――亜美」

久世が、呼んだ。

「別れた後で言っちゃなんだが…」

久世は横を向き、手の甲を口に当てた。

「何?」

チラッと、視線だけ動かしてあたしを見る。

「コーヒーマズかったとか?」

「そ、そんなんじゃあねー!」

久世があたしを見た。

「インスタントにうまいマズいがあるのかどうかは知らないけど」

「うっ…」

久世は額に手を当てた。
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