死にたがりの魔法使いくんと死神ちゃん
「可愛い子ちゃんと、こんな夜に逢い引きも出来たし、私はそろそろ戻るよ」
満足気に、そう言って笑うキング。
そのまま大人しく去って行くのかと思っていたら、私の方に一歩近づく。
「な、なに…?」
自然と半歩下がる。
「まったく、警戒心が強いなー」
むっとした様子のキング。だが、さして気にしていないように、更に私に近づき、あっ。と思った時には、私のピンク色の髪を一房手にとり、軽く口付けた。
「な、ななっ…!」
思いきりキングから離れる。
ちょっと傷付くなぁ。なんてキングは笑っている。
「ちょっと!アナタ、仮にも一世界の王様なんだから、その軽い性格治しなさいよ!」
「えー。それはヤダなぁ」
何故かケラケラ笑い出す。
「…………何なのよ」
「いや、昼間にウィッチから言われたことを思い出して、ね?」
魔法使い?
「何て言われたのよ?」
「そろそろ身を固めたらどうか、って」
それは、側近として正しいのではないだろうか。いつまでも、自分の主がフラフラしていては、心もとないだろう。
「じゃぁ、言われた通り、結婚でも何でもしたらいいじゃない。キングなら、選びたい放題じゃないの?」
「……さぁ、どうだかね」
いつもの軽い調子で返事がくると思っていた私は、思わず拍子抜けする。
なんだか、重たい空気が漂ってくる。
「……えっと、」
なんて言ったらいいかわからず、言葉につまる。
「なーんて、ね!」
「へ?」
「いやぁ、みーんな大事な子だし、可愛いし、選べと言われても選べる訳ないよねぇ」
ケラケラ笑いながら、いつものキングの調子に戻る。空気が軽くなり、ほっとした。
「一人の子になんか、決められない。だから、暫くは結婚なんて考えられないよー」
「……あっそ」と冷たくあしらう。
「冷たいなぁー死神ちゃん」
「どうとでも言いなさい!」
さて。と気をとり直したかのように、キングはくるっと後ろ向きになる。
「じゃ、今度こそ行くよ。死神ちゃんも早く部屋に戻るんだよ」
「ええ。おやすみなさい、キング」
ヒラヒラと手を振りながら、キングは去って行った。
キングの気配が完全になくなった後、私も城の中へと戻った。