ある冬の日



「大丈夫でしょ。さとちゃんいつも梨華が考えた提案許可してくれてたし」



「う~ん。だといいけど」



1時間目の開始を知らせるチャイムが鳴って、あたしのクラスのみんなもそれぞれ席に着きはじめる。



「じゃあさとちゃんに伝えといて。『思い出会』がやれるかどうかは千尋にかかってるからね!」



「はいはい。わかったわかった」



そして梨華も自分の席に戻って行った。



1時間目は英語。



といってももうすぐ卒業だし、ほとんどの教科の授業が復習や入試対策だったり各自の自習勉強の時間になるから、新しいこと習わないしけっこう楽。



……楽、なんだけど、でもどこか教室の空気がピリピリしてて気が抜けないなと感じる。



自習勉強のときは個人で先生に質問してる人も何人かいるし。



あたしはまた制服の胸ポケットからリップクリームを取り出して塗り直した。



リップクリームの甘いストロベリーの香りは、なんだか緊張をほぐしてくれてリラックス出来る。



第一志望の高校の入試まであと少し、もうちょっとだけ、頑張ろ。



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