ある冬の日



「あの紗奈ちゃ」「すいません。失礼します」



ウチが紗奈ちゃんに話しかけようとしたら、紗奈ちゃんはウチを横切って手を洗うと、荷物をもってそのまま逃げるように女子トイレから出て行ってしまった。



「梨華トイレ空いたよー」



ずっと出入口を見てたウチに違うクラスの友達がそう言った。



「あ、うん。じゃあウチ入る~!」



なんでこうなっちゃうんだよ。ほんとにもう。



紗奈ちゃん、寂しいだろうな、いっつも1人で。



なんかウチらにいっつも遠慮してる感じだし。



たぶんもう卒業まで紗奈ちゃんとはずっとこういう距離感なんだろうな。



あ~あ。もどかしいよ。



もうどうしたらいいのかわかんない。



こういうとき、ほんとにどうしたらいいの?



ん~。



ダメだ。わかんない。



ま、いっか。



だって考えるといろいろとめんどくさいんだもん。



もういろいろ考えるのはやめよ。



……。



うん、やめよ。



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