ある冬の日



あいつ、休み時間いつも本読んでるよな。



そういえばオレあいつとあんまり喋った事ないかも。



喋った事ないからあくまで雰囲気だけど、あいつは多分、無口な奴だ。



静かすぎる女は嫌いだけど、今は宮本みたいなやつの隣に居たいと思った。



オレの目の前に居るクラスの女子たちはまだガチャガチャ騒いでるしよ。



つーか珍しいよな、ああいう宮本みたいな女子。



いや、そんな事ないか。



クラスに必ず1人は居そうなタイプだな、あれ。



……って、なに考えてんだオレ。



あー腹減った。オレも今日はカレーおかわりしよ。



教室に着くとオレは真っ先に自分のロッカーに置いてあるスクールバッグの中からお茶を取り出した。



冬でもやっぱり体育の後は喉がかわく。



そしてペットボトルに入ったお茶を飲もうと蓋を開けたときだった。



「っと」



手が滑ったのかなんなのか、ペットボトルの蓋が床に落ちた。



教室の床の上でコロコロと転がりぽつんと止まったペットボトルの蓋。



その様子をただ眺めていたオレはそのとき、よかったと思った。



蓋が“落ちた”のがオレで。



さっきバドミントンでペアを組んだあいつじゃなくて。



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