赤い月 参
立ち上がることもできず、こちらに手を伸ばす奴。
あの衝撃を受けたのだ。
まだ身体中痛むだろう。
だがこのまま放っておけば、きっと逃げ出す。
いや、逃げるのに手を貸す?
俺は…
「ソイツ、お友達なの?」
作業を終えた景時が、膝の汚れを払いながら大吾に声を掛けた。
友達…なのか?
今も?
俺の大切なものを壊そうとした、今も?
「‥‥‥‥‥
友達だ。」
大吾は項垂れ、掠れた声を絞り出した。
「そっか。
じゃ、殴ってやれよ。」
静まり返ったライブハウスに、軽い声がやけに重々しく反響する。