赤い月 参

見送る景時とうさぎを、彼は一度だけ振り返った。


「うさぎさん…
ありがとう。」


薫を気遣うようにゆっくり歩む背中が、木々の間に消える。

景時はポツリと呟いた。


「アイツ…
フツーに笑えンじゃん…」


しかも、ちょっとイイ男デシタヨ?

ちょっっっとだけだケドね?!

なんか…結構強敵なんじゃね?
魔法使い廃業すると。

大人だし、基本イイヤツだし。

不安になった景時がうさぎを見上げると、彼女はまだ水原が立ち去ったほうを見ていた。

‥‥‥‥‥嘘でショ?


「うううさちゃん?
まさか…」


「堅固な枷を打ち砕き、自由を求める不屈の心。

人とは、かくも強きものであったな。」


うさぎはどこか遠い目をして微笑んだ。

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