ブラックコーヒー

□計算じゃない素

その週の土曜日。
私は斗真の家に来ていた。



「…大丈夫だから。」



隣に立つ斗真が私の手をギュッと握った。

突然呼ばれて…何かと思えば、目の前にはあの日ぶりの一樹さん。



「…美由里ちゃん。」



弱々しく掠れた声で呼ばれて、私はそっと一樹さんの目を見た。

まったく怒りはないって言ったら嘘になるけど、一樹さんのことは許してる。



「…俺、本気で美由里ちゃんが好きだった。てゆーか好き。」

「…うん。」

「こんなに好きになったの、美由里ちゃんが初めて。」



そう切なそうに微笑んだ。
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