ブラックコーヒー
家に着くと、聞こえてきた怒鳴り声。



「……。」



“ただいま”は言わない。

だって言葉を交わしたくない。
どうせ自分の声で聞こえないだろうけど。



「…はぁ、疲れた。」



自分の部屋で鞄を降ろして、溜め息を吐いた。

最近増えた溜め息とこの単語。


……きっともう、限界なんだろうな、私自身が。



「…斗真…。」



助けて。


話したいと何度も思った。
話そうと何度も思った。

だけどそのたびに邪魔が入る。



「渡部…。」



あの人はかなりの確率でミスをする。
そしたら尻拭いは教育係の斗真の仕事。
< 287 / 382 >

この作品をシェア

pagetop