ブラックコーヒー

■決意を胸に

急いで会社に向かう。

どんなに急いだって、美由里がもう家にいないだろうことは分かっていた。


それでも急ぎたかった。



「渡部!」



オフィスに飛び込むと、1人ただずむ渡部がいた。

他の奴らはもう帰ったらしい。



「坂沼先輩。」



そう微笑む渡部には電話のときのような切羽詰まった様子はない。



「やっぱり来てくれた…。」

「は…?」

「私がミスしたって言ったらすぐに来てくれるでしょう?」



俺はことを理解すると、渡部を睨み付けた。



「…何が目的?」
< 320 / 382 >

この作品をシェア

pagetop