お姫様の作り方
バルコニーの風は冷たかった。それもそのはず。もう12月だ。


「…でも、気持ちいい…。」


無駄に暑苦しい空気にうんざりしていたところだった。冷たい風も頬を覚ますには丁度良い。


「…魔法の絨毯でもあればなぁ…。」


一人だと分かっているからこそ口から出た言葉。


「私をここからさらってくれるのに。」


こんな願望、まるで待っているだけの〝お姫様〟みたいだ。
籠の鳥という意味では私も〝お姫様〟の一人だとカウントできるけれど。
でも私は姫なんかじゃない。だから待ってもいない。
―――望むだけ無駄だと分かっている。自由を。全てのしがらみから解放される自分なんて、願うだけ無駄なのだ。


「…帰ろう。」


どうも今日は本格的に気分が乗らない。
でもここでいきなり帰ることもできない。…じゃあどうするべきか。


私はバルコニーを後にした。
向かったのは使用人の猿田のところだ。


「猿田さん。」

「なんでしょうか、茉莉花お嬢様。」

「体調がすぐれないの。車を回してくださる?」

「承知致しました。今すぐ平蔵様にご連絡致します。」

「お願いするわ。」


私は仮病を使うことにした。とは言っても完全に仮病でもない。
〝気分〟はすぐれないのだから。

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